<サハリン>置き去りの悲劇 「残留朝鮮人」知って 本出版

 日本の植民地時代に朝鮮半島からロシア・サハリン(旧樺太)へ渡り、置き去りにされた残留朝鮮人一家を追ったドキュメント「あるサハリン残留朝鮮人の生涯」(凱風社、1995円)が今月、出版された。著者のフォトジャーナリスト、片山通夫さん(65)=大阪府枚方市=は「日韓併合100年の今年、日本の植民地支配によって戦後も翻弄(ほんろう)された人々を知ってほしい」と話している。

 片山さんは00年、サハリン残留朝鮮人の集団永住帰国が始まったのを機にこの問題に取り組み、10年かけて関係者の証言や資料を集めた。現在もサハリンで残留朝鮮人の実態調査や補償問題に取り組む鄭泰植(チョン・テシク)氏の家族に焦点を当て、流浪の軌跡をたどった。

 泰植氏の父は、朝鮮半島南部で農業を営んでいたが総督府に土地を奪われ、サハリンの炭鉱へ出稼ぎに。家族も父を追ってサハリンへ渡るが戦況悪化で炭鉱は閉鎖。父は炭鉱会社の命令で九州の炭鉱に移った。戦後、父はサハリンの家族の元へ北海道から密航する。サハリンの炭鉱で働き、68年に亡くなった。

 戦後、サハリンにいた日本人の多くは祖国に帰還したが、朝鮮半島は国家が分断。旧ソ連の崩壊直前まで韓国との間に国交がなく、4万人ともいわれるサハリン残留朝鮮人が生まれた。

 泰植氏は戦後、サハリンの朝鮮人学校の教師に。帰国を夢見て無国籍でいたが、生活の不便さからロシア国籍を取得。永住帰国できる今もサハリンにとどまる泰植氏は
 「年寄りになって、子や孫と離れて祖国へ帰ったって……」
と語る。

 片山さんは
 「サハリンで永住帰国の資格があるのは終戦以前に生まれた人だけ。現地では新たな離散家族が生まれている」
と指摘する。【林由紀子】


[ 2010年8月29日 (毎日新聞)



2010年09月03日 Posted byかるの at 09:17 │Comments(0)TrackBack(0)近現代史

この記事へのトラックバックURL
http://fu1to.i-ra.jp/t253335
上の画像に書かれている文字を入力して下さい