幻の古浄瑠璃、300年ぶり復活上演…新潟・柏崎
本番を目前に行われた古浄瑠璃の通しげいこ(5月30日、新潟県新発田市で)=米山要撮影
江戸時代に台本(正本)が海外に流出し、埋もれたままになっていた 古浄瑠璃 ( こじょうるり ) 「越後国 柏崎 弘知法印御伝記 ( こうちほういんごでんき ) 」が7日、物語の舞台となった新潟県柏崎市で約300年ぶりに復活上演される。
古浄瑠璃が語りや三味線の節回しも含めて、全編にわたって再現されるのは珍しいという。
御伝記は、同県長岡市の 西生寺 ( さいしょうじ ) に即身仏として安置されている僧・弘智法印がモデル。妻との死別などを乗り越えて修行を重ね、即身仏になるまでを描く。
1685年に台本が発表されたが、7年後にドイツ人医師が長崎・出島から台本を海外に持ち出した。1963年、鳥越文蔵・早稲田大名誉教授がロンドンにある大英博物館で偶然見つけ、原本を元に66年に復刻出版した。当時、国内では台本の存在が確認されていなかった。
公演は、新潟を中心に活動する文楽の三味線弾き・越後角太夫(文楽の芸名・鶴沢浅造)さん(58)=新潟市=が2007年、知人の日本文学研究者ドナルド・キーンさんから台本の存在を聞いたことがきっかけ。
越後さんは、人形遣いの西橋八郎兵衛(本名・健)さん(61)=新潟県佐渡市=と共に
「人形浄瑠璃の源泉を知り、新風を吹き込みたい」
と思い立った。公募した初心者らと約20人で「越後猿八座」を発足させた。
語りや三味線の節回しは口伝えのため、古浄瑠璃の流れをくむ佐渡市の浄瑠璃「 文弥節 ( ぶんやぶし ) 」などを参考に再現した。顔を傾けたり、震わせたりして登場人物の感情を表す。本番では、主人公の波乱万丈の生涯を約3時間かけて演じる。
越後さんは
「古浄瑠璃は粗削りだが、庶民の心情が表された魅力がある」
と語り、西橋さんは
「人形の動きに感情を込め、素朴さを伝えたい」
と意欲を見せる。
鳥越名誉教授は
「浄瑠璃の源流を明らかにする初めての貴重な試み。ゆかりの地の人たちによる公演も意義深い」
と期待する。
公演は、7日に柏崎市、7月11、12日に新潟市でも行われる。問い合わせは「越後猿八座」(025・222・3870)へ。
[ 2009年6月6日 (読売新聞)
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