文化財盗難 島民落胆「まさか」 教育長「防犯体制を強化」
観音寺の観世音菩薩坐像(「対馬市の文化財」より)
対馬市の無人の寺社から仏像2体と仏教経典が相次いで盗まれたことがわかった9日、島民の間には驚きと憤りが広がった。梅野正博・市教育長は記者会見で「残念でたまらない。後世に残すためにも管理のあり方、防犯体制を強化する」と対策を急ぐ考えを示した。
市教委によると、対馬の指定文化財は国、県、市の計188件で、県内では長崎市に次いで多い。うち国の23件、県の42件については、盗まれた3件のほかは無事だった。市の分も確認を進めている。市教委は、仏像や経典などの管理や見回りを地域住民に依頼している。
観世音菩薩坐像が盗難にあった豊玉町小綱地区は約110人が暮らす静かな漁業集落。区長の村瀬定さん(63)は「まさかという思いだ」と肩を落とす。
国指定重要文化財「銅造如来立像」が盗まれた海神神社では、宝物館管理人の島井利和さん(65)が「鉄製扉には丈夫な南京錠が二つあるのにどうやって開けたのか」と悔しがる。観音寺と宝物館では、侵入者を感知して鳴るサイレンが機能しなかった。
仏教経典「大蔵経」の一部が盗まれた多久頭魂(たくずだま)神社は、島最南端の厳原町豆酘(つつ)の深い森の中にある。市教委では、収蔵庫の防犯カメラと赤外線センサーが正常かどうかを確認している。
(2012年10月10日 読売新聞)
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