江戸の大工の心意気 細部こだわり 春日大社造替に使用? 奈良
■「木奥家」民家から道具発見
奈良市内の民家から江戸時代の大工道具が発見され、奈良文化財研究所(奈良市)が3日、発表した。当時の大工の家系「木奥家」が春日大社(同)の造替に使用したとみられ、奈文研は「大工道具の歴史を解明する上で、きわめて重要」としている。
発見の成果は、奈文研が発行する「奈良文化財研究所紀要2012」に掲載された。
木奥家は、13世紀末から明治時代初期まで、春日大社の造替などを独占的に担った大工集団を構成した家系。
大工道具は平成8年、奈良市の旧市街地「奈良町」の木奥家の民家で屋根の修理中、最初に屋根裏で発見された。
さらに奈文研が木奥家の蔵などを調査したところ、計194点を確認した。斧や錐(きり)、鑿(のみ)など11種類に分類できるという。
通常の大工道具と比較して、木工細工など細かい作業に適した道具も含まれていた。
形状もさまざまで、鉋(かんな)の刃だけを再利用して土台を付け替えたり、刃の大きさを半分にしたりし、使いやすく改良していたことも判明した。
木奥家は明治時代初期に大工を廃業した可能性が高く、今回発見された大工道具は、大半が江戸時代後期のもので、数点が同時代中期に遡るという。
奈文研の調査では、春日大社の造替に関連した史料「春日社丈尺之記」の写しなども確認された。
奈文研は「春日大社の社殿は複雑な細工が少ないものの、大工が細部の仕上げにまでこだわり、仕事をしていたことがうかがえる」としている。
2012.7.4 02:37
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