新たに9世紀の製鉄炉…福島・横大道遺跡
横大道遺跡で新たに見つかった長方形箱形炉の跡
福島県南相馬市小高区飯崎にある奈良、平安時代の製鉄遺跡「 横大道 ( よこだいどう ) 遺跡」で、9世紀中頃の製鉄炉の跡1基と、8世紀後半~9世紀の木炭窯の跡14基が新たに見つかり、県文化振興事業団が15日、現地で報道陣に公開した。
同遺跡とその周辺では、これまでにも製鉄炉や木炭窯の跡が多数確認されており、同事業団では「当時の浜通り北部一帯が一大製鉄基地だったことを裏づけるもの」としている。
横大道遺跡は、常磐自動車道の建設工事に伴い、県教委の委託を受けた同事業団が2007年から発掘調査を行っている。今回見つかった製鉄炉跡は「長方形箱形炉」と呼ばれるもので、長さ約180センチ、幅約50センチ。踏みふいごという送風装置の跡や、羽口と呼ばれる土製の送風管、炉の構造を知る上で貴重な手がかりとなる倒壊した炉壁の跡などが確認された。
また、炉の周辺の製鉄後の残りかすの中からは、純度の高い鉄の塊(約80グラム)も見つかった。製鉄に必要な木炭を焼く、地面をトンネル状に掘った窯の跡は、長さ8メートルを超える大規模なものもあり、発掘をしていない部分も含めると30基以上が存在するという。
同遺跡では07年に、直径約20メートルの円形に盛り土をした中に6基の製鉄炉が作られた、全国的にも珍しい環状製鉄遺構が見つかっている。南側に隣接する「舘越遺跡」も合わせると、これまでに確認された製鉄炉跡は10基以上、木炭窯跡は50基以上にのぼる。
また、横大道遺跡から北に約4キロの「荻原遺跡」や、東北電力原町火力発電所の一帯にある「金沢地区製鉄遺跡群」など、周辺には7~9世紀の大規模な製鉄遺跡が集中している。この年代は、中央政権によって 蝦夷 ( えみし ) 征討が行われた時期と重なっており、同事業団遺跡調査部の門脇秀典・文化財副主査は
「この地域で製造された鉄が、蝦夷征討のための武器や、鐘や仏具など鋳物の鋳造に使われたのではないか」
と話している。
[ 2009年7月16日 (読売新聞)