かやぶき屋根を後世に…職人養成や費用助成
重厚なかやぶきが美しい国指定重要文化財「鈴木家住宅」

美しい里山の風景を後世に伝えようと、秋田県羽後町が、かやぶき民家の保存に乗り出した。
高齢化などで減少しているかやぶき職人の養成を先月から始めたほか、来年度、かやぶきを修理する住民に費用の一部を助成する。伝統のかやぶき民家を1軒でも多く残し、将来、観光に生かす狙いもある。
町企画商工課によると、町内には現在、国指定重要文化財の「鈴木家住宅」など、約80軒のかやぶき民家が残っている。東北有数の軒数で、里山と一体になった風景を写真撮影しに訪れる観光客も多いという。
◆増えるトタン屋根◆
だが、かやぶき職人の数は高齢化と後継者不足によって町内でわずか5人に減り、トタン屋根の民家が次第に増えてきている。
町がかやぶき民家の保存に乗り出したきっかけの一つは、今年2月、かやぶき民家の住民を対象に市民団体と合同で行ったアンケート調査だった。80軒のうち、6割を超す50軒が、かやぶき民家を保存したいと回答したが、「職人が高齢化して頼みづらい」「修理費が高い」との声が多かった。
そこで町は、職人養成事業の開始を決め、9月議会で333万4000円の補正予算を確保した。さらに来年度、かやぶきの修理費用の一部を住民に助成する方針も固めた。
職人養成事業に応募した6人の中から面接などで選抜され、先月、職人の卵となったのが、柴田徳一さん(43)だ。研修開始から約1か月。町で最もベテランの職人、村上賢助さん(82)の指導のもと、かやぶきの修理や、材料になるススキを刈る作業を行っている。
◆風景守るため頑張る◆
柴田さんの父はかつて村上さんと一緒に仕事をしたかやぶき職人だった。若い頃、作業で真っ黒になって帰ってくる父の姿を見て、「自分は職人になるなんて考えたこともなかった」といい、工場勤めや店員などをしてきたが、今回、村上さんや両親の勧めで、職人への転身を決めた。
「全くの素人で、作業を覚えるのは大変だけど、かやぶきの風景を守るために頑張りたい」
と柴田さん。今後3年間、町の援助を受けながら、村上さんのもとで腕を磨く予定になっている。
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職人養成事業の対象は2人だったが、柴田さんと同時に研修を始めた男性が不向きを理由にやめたため、町は現在、希望者1名を追加募集している。
普通自動車免許の保有などが条件。土日祝日は休みで、日給1万円が支給される。
希望者は10日必着で履歴書を町役場内の観光物産協会に送付する。
問い合わせは町役場((電)0183・62・2111)へ。(川瀬大介)
[ 2009年11月9日 (読売新聞)