鳥獣戯画、表裏に描かれていた…はがして巻物に
京都市の高山寺に伝わる国宝「鳥獣人物戯画」(全4巻、平安後期~鎌倉後期)の丙巻が、もとは和紙10枚の表裏に描かれた絵で、1枚ずつ表裏を2枚にはがし、つなぎ合わせて巻物にしたことがわかり、京都国立博物館が15日発表した。
紙を表裏にはがす手法は絵巻物では異例。江戸時代前期に鑑賞しやすいよう仕立て直したとみられ、現在の4巻になる以前の姿に迫る研究成果となる。
戯画は甲・乙・丙・丁の4巻。うち丙巻は縦31センチ、幅57センチ前後の和紙を計20枚つなぎ合わせており、前半10枚は人物画、後半10枚は動物画で構成される。
現在は同館文化財保存修理所で修復中。歩くカエルを描いた19枚目に残る墨の跡が、2枚目に描かれた人物たちの 烏帽子 ( えぼし ) の位置と一致し、墨が裏にしみたものと確認した。1枚目と20枚目、3枚目と18枚目も、墨や汚れ、損傷が一致。20枚が和紙10枚の表裏だったと判明した。
先に人物画が描かれ、後に別の人が裏に動物を描いたらしい。
他の3巻は片面にしか絵はなかったが、丁巻は絵のない裏面をはがし、各巻の補修用の紙に用いていたこともわかった。
和紙は原材料の植物繊維を水ですいて作るため、層状になり、表と裏を分離しやすいという。
戯画はカエルやウサギなど擬人化された動物を生き生きと描いた墨画で、マンガの源流ともいわれる。
[ 2011年2月15日 (読売新聞)