青木繁:重文の下絵も 未公開資料60点確認
日本の近代洋画史を代表する福岡県久留米市出身の画家、青木繁(1882~1911年)のスケッチなど約60点を、愛知県岡崎市の美術愛好家の男性が所蔵していることが分かった。国の重要文化財「わだつみのいろこの宮」の下絵も確認された。うち約20点を久留米市の石橋美術館が「没後100年青木繁展」(3月25日~5月15日)で公開する。
資料を確認した同館によると、鉛筆スケッチのうち約10点は猟師の家族や魚に似た形が描かれていた。これらは、一緒に見つかった房総半島の地図や釣りざお、絵の具を買うための借用書と思われるメモなどから、千葉県館山市布良(めら)での代表作「海の幸」(1904年、国重文)制作時と、ほぼ同時期に描かれたとみられる。また、別の2点は「わだつみのいろこの宮」(07年)の下絵だった。この2点は美術評論家、河北倫明の著書で存在は知られていたが、初めて所在を確認できた。
他に和歌5首を記したノート、色鉛筆の図案もあった。資料は特別展を企画した石橋美術館に、愛好家男性から協力の申し出があり、確認された。森山秀子・石橋美術館学芸課長は
「これだけまとまった資料は貴重だ。青木特有の勢いのある線描が見られる。研究に役立てたい」
と話す。
青木繁展は石橋美術館の後、京都市の国立近代美術館(5月27日~7月10日)、東京のブリヂストン美術館(7月17日~9月4日)でも開かれる。【渡辺亮一】
[ 2011年2月16日 (毎日新聞)