窯元避難で伝統工芸、消滅危機…浪江町の陶磁器「大堀相馬焼」
日本伝統の技が東日本大震災によって消滅の危機を迎えている。国が指定する伝統的工芸品の一つ、福島県の陶磁器「大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)」の産地である双葉郡浪江町は、町の大半が福島第1原発から30キロ圏内で、作り手である窯元は全国に避難。このままでは指定条件を満たさなくなってしまうため、関係者の苦難が続いている。
「まだ連絡が取れない窯元もいるんです」。
17世紀末、浪江町に大堀相馬焼を広めた半谷休閑(はんがい・きゅうかん)から15代目にあたる大堀相馬焼協同組合の半谷秀辰(ひでとき)理事長(57)はそう話す。22軒ある窯元はそれぞれ、福島県内の別の市町村や埼玉、高知などに避難。半谷理事長自身も茨城県日立市に避難しており、
「励まし合うこともできないんです」。
経産省が指定する「伝統的工芸品」の条件は「10企業以上または30人以上の製造者がいること」。材料がそろい、窯元が集まれば、伝統を継続させられるものの、現状では見通しは立たない。
東京に自主避難した長橋明人さん(45)は
「伝統の灯を消すな、というのはきれいごとかもしれない。高齢化が進み、ただでさえ斜陽の産業を続けるべきかどうか、微妙」
と苦しい胸のうちを明かした。
「何とか福島に戻って、年内に理事会をやりたい」。
半谷理事長は一時帰宅などの機会を探り、何とか伝統継承のために、みんなの意見を集めたいとしている。
◆「がんばろう!日本!!」 全国伝統的工芸品センター(東京都豊島区西池袋)では、15日から東日本大震災 復興支援企画展「がんばろう!日本!!」(27日まで)を開催する。大堀相馬焼のほか、宮城県の雄勝硯と宮城こけしを値段を下げて販売。売り上げは全額産地に寄付される。同時に、栃木県の益子焼も約4000点が販売され、売り上げの一部が大堀相馬焼の産地に寄付される。詳しくは同センター((電)03・5954・6066、http://www.kougei.or.jp/)まで。
[ 2011年4月15日 (スポーツ報知)