小浜の民俗行事と伝統食調査開始 市が地域資源をデータ化へ
福井県の小浜市は12日、市内全12地区に残る民俗行事と伝統食に関する総合調査を開始した。市民約40人が調査員となり、学者や行政の指導の下、各地区の行事の起源や概要、食文化と深く関わるお供え物などを調べる。市が調査結果をまとめ、来年3月に開くシンポジウムで報告する計画で「小浜らしい歴史文化を再発見・発信し、まちづくりに生かす足掛かりにしたい」(文化課)としている。
若狭地方は「民俗文化財の宝庫」とされるが、市によると、少子高齢化や地域コミュニティーの変化で、市内の民俗行事の衰退や簡素化が年々進み、存続の危機を迎えている行事も少なくない。また、行事のお供え物などには地域の食文化が色濃く残されている側面もある。
市と若狭町が昨年3月にまとめた「歴史文化基本構想」では、両市町は地域住民とともに民俗と食文化を軸とした歴史文化の継承、発展を目指すとしている。総合調査は、基本構想の指針に基づき、今のうちに歴史文化という地域資源を掘り起こしてデータ化、まちづくりに生かす狙い。将来的には、祭りと伝統食を組み合わせた観光事業を検討するなど、小浜らしい観光交流を創出していきたい考え。
12日は、市民調査員対象の説明会が市文化会館で開かれた。50~70代の一般市民が参加し、市の担当職員が調査目的や、調査票の記入法などを指導した。調査員は今後、民俗学者の神崎宣武さんの助言を受けるなどして調査票を完成させ、7月20日までに市に提出する。市は回収した調査票を基に、7~11月に各地区での聞き取りなどの詳細調査や分析を行う。
シンポジウムは3月3日に市文化会館で開く。調査結果の報告をはじめ、神崎さんの基調講演や、パネル討論などを行う予定。
市は「調査結果はシンポジウムでの報告だけでなく、書籍やデジタル化による情報発信、市食文化館の展示などにも生かし、歴史文化を生かしたまちづくりを推進したい」(文化課)としている。
(2012年6月13日福井新聞)