純白の姫路城、復活へ大修理


 平成の大修理が行われる姫路城(読売ヘリから)=中原正純撮影
純白の姫路城、復活へ大修理
 兵庫県姫路市の世界遺産・姫路城(国宝)で、この秋から5年半かけて、「平成の大修理」が行われる。

 約半世紀ぶりとなる大天守の修理では、総重量250トンの 漆喰 ( しっくい ) で壁を塗り替え、8万枚の瓦をふき直す。別名の「 白鷺 ( しらさぎ ) 城」をほうふつとさせる優美な、純白の装いがよみがえる。作業は一般に公開する方針で、修理費の一部をまかなうための募金が4月からスタート、巨大プロジェクトが始動する。(姫路支局・中筋夏樹)

 大天守(5層)の壁は総面積7000平方メートル。壁だけでなく、軒裏、屋根瓦の目地も計3回塗り重ねる。使われる漆喰250トンは、ジャンボジェット機の機体の重量(180トン)の1・5倍近くになる。メーカーや職人らでつくる「日本漆喰協会」(東京)の担当者は「漆喰をこれだけ使う工事は、ほかには考えられない」という。

 一方、瓦は8万枚で、総重量は約160トン。大阪城(約5万5000枚)をしのぐ。すべて屋根から下ろし、手作業で水洗いする。乾燥させた後、たたいて音で品質を見極め、可能なものは再利用することにしている。市教委文化財課は「1枚1枚が国宝の一部。できるだけ丁寧に扱いたい」という。

 築城以来約400年、城主や国が手厚く扱い、計36回の補修が行われてきた。1956年から64年までの「昭和の大修理」では、大天守を柱や 梁 ( はり ) まで解体。基礎にコンクリートを打ち、長さ24・6メートルの木製の心柱を取り換えた。昭和の大修理を指揮した元文部技官、西村吉一さん(77)は
 「国宝を解体するという大仕事に緊張した。職人の皆さんは『数百年後もそびえる城を造ろう』との心意気で乗り切った」
と振り返る。

 当時、作業に当たったのは延べ25万人。今回は1万人程度にとどまる見通しだ。市は「人材が命。全国的にも文化財修理の経験者は少ないが、できる限り、経験豊富な人に任せたい」と期待する。

 工事中は、高さ52メートル、8階建ての巨大建屋が大天守を覆い、むき出しになる屋根の下地や、壁の木枠を風雨から守る。7、8階部分には、ガラス張りの見学室(計600平方メートル)を設け、大天守の外観や、作業の様子を見学できるようにする。文化庁によると、世界遺産の大規模な補修作業を常時公開するのは初めてだろう、という。

 工事費は28億円で、国が18億円、姫路市が10億円をそれぞれ負担。市は6億円を寄付でまかなう考えで「しろの日」の4月6日から受け付ける。

 多淵敏樹・神戸大名誉教授(建築史)の話
 「文化財保存の過程がわかり、城を普段と違う角度から見られる絶好の機会。市民に広く公開する点で、今後の文化財補修のあり方のモデルケースになるだろう」

          ◇

 姫路城 関ヶ原の戦いの戦功で姫路藩主となった池田輝政が1609年に築造した。5層の大天守(高さ31.5メートル)と3つの小天守を結んだ連立式天守閣や、総塗り込め造りの白壁が特徴。1993年、法隆寺(奈良県斑鳩町)とともに日本で初めて、世界文化遺産に登録された。

[ 2009年3月18日 (読売新聞)



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2009年03月31日 Posted byかるの at 09:15 │Comments(0)文化財保護

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