<高松塚古墳>四神・白虎「復活の可能性も」 文化庁検討会
白虎(西壁)=奈良文化財研究所撮影

高松塚古墳(奈良県明日香村)の国宝壁画の劣化原因を調査する文化庁の検討会が11日、東京都内であった。
壁画のうち最も劣化が激しく、輪郭などの描線が薄れて消失した可能性が指摘された四神・白虎(西壁)を調べたところ、実際には描線が残っているとみられる部分が十数カ所あることが報告された。原因不明の白い物質に覆われており、取り除ければ復活する可能性があるという。
奈良文化財研究所の肥塚隆保・埋蔵文化財センター長らが10~11月、高精度のデジタルカメラや赤外線などで、肉眼では描線が見えない白虎の背中や目、前脚など約30カ所を調査した。このうち左前脚のつめや唇など十数カ所で、白い物質の下に顔料などの存在が確認できた。
肥塚センター長は
「白い物質は、カビの除去作業に使った薬剤の影響でしっくいの表層が溶解した可能性がある」
と指摘。一方、背中や目の一部は描線が確認できず、消えた可能性が高いという。
【林由紀子】
2008年12月12日 (毎日新聞)
高松塚古墳壁画の白虎、描線が一部消失…修復極めて困難

白虎の左前脚の赤外線写真。斜めに走った描線を白い物質が所々で覆っている(文化庁提供)
奈良県明日香村、高松塚古墳(8世紀初め)の国宝・極彩色壁画で、最も劣化が進んでいる西壁の「白虎」について、奈良文化財研究所などが調査した結果、背中では描線が消失し、前脚などでは白い物質が描線を覆っていることがわかった。
文化庁は、現在の技術では修復は極めて難しいとしている。11日に東京で開かれた同庁の劣化原因調査検討会で報告された。
背中部分では、発見当初あった描線が消失したとみられることが判明。一部で表面をこすったような跡があり、赤外線撮影を行った肥塚隆保・奈良文化財研究所センター長は
「水分を含んで軟らかくなった 漆喰 ( しっくい ) が、カビ除去などを行う際に削られたかもしれない」
と、人為的な要因である可能性を指摘した。
一方、左前脚と赤い爪の一部など十数か所では白い物質が表面を覆い、その下に描線や顔料が残っていることを確認した。物質の成分は不明だが、漆喰の石灰質が溶けだしたか、カビや酵母などの混合物が付着した可能性があるという。
白虎は、1980年12月~81年2月に描線が急速に薄れたことが判明。この間の作業日誌で石室内の広範囲にカビが発生し、防カビ剤を使った記録が残る。
2008年12月12日(読売新聞)