巨大グラディエーター養成所跡を発見
オーストリアのウィーン近郊で、古代ローマの巨大な剣闘士養成学校の遺跡が見つかった。大規模な複合施設で、ローマのコロッセオ周辺の養成施設に匹敵する。
発見された遺跡は木製の訓練用ダミーの痕跡など、ローマの剣闘士養成学校(ラテン語でルードゥス)にはこれまで見られなかった特色がある。門の外で剣闘士の墓地が見つかったが、ルードゥスの構内にあるのは初めてだと調査チームは話している。
遺跡が発見されたカルヌントゥム考古学公園の科学主任であるフランツ・フーマー氏は、「私のキャリアで考えられる最も興味深いもののひとつだ」とも話している。
養成学校はおそらく、隣接する1万3000人収容の円形闘技場と同時に作られている。円形闘技場はマルクス・アウレリウスがローマ皇帝だった西暦150年ごろに建設されたもので、1920年代と1930年代に発掘された。
アウレリウス帝はカルヌントゥムに滞在したことがわかっており、その息子コンモドゥス(2000年の大作映画『グラディエーター』に同名の悪帝が登場)が剣闘士の試合を初めて見たのは、ここカルヌントゥムだった可能性がある。
中庭にはローマ版の外野席が完備された小型の円形闘技場があり、剣闘士はここで動きを練習することができた。大半が奴隷だった剣闘士たちは、買ってくれそうな人を求めてここで実演したのかもしれないとフーマー氏は推測する。
養成施設の隣には壁で囲われた敷地があった。これは剣闘士が戦う野生の動物を閉じ込める、あるいは馬を訓練するといった用途で使われていた可能性がある。これまでのルードゥスには認められなかった機能だとフーマー氏は話す。
面積は施設全体で1万9000平方メートルほどあるが、カルヌントゥムの剣闘士養成学校の中心的な建物群は、ローマとポンペイで発掘された従来の養成学校の遺跡と非常によく似ている。調査チームはこの類似性から、カルヌントゥムで見つかったものは、まだ発掘してはいないがまさしく剣闘士の養成学校だと確信している。
[ 2011年9月14日 (ナショナルジオグラフィック)