正倉院宝物「椰子実」、鼻やひげがあった
ココヤシの殻を人面のように加工した正倉院宝物の容器「椰子実」(直径11・8センチ、170グラム)が、墨で鼻やひげを描き、朱を塗った“赤ら顔”だったとみられることがわかった。
宮内庁正倉院事務所(奈良市)が21日、発表した。南方の民具ではなく、日本か中国で加工されたらしく、同事務所は「何のために作られたかは不明だが、遊びで作られたものではなく、精細な製品」としている。
椰子実は、口に見立てた穴(直径3センチ)の周りに、目とまゆが描かれている。赤外線写真を撮ると、穴の上の隆起部分に小鼻や鼻孔を描き、両脇のしわをなぞって、ひげを表した線があった。表面からは朱に含まれる水銀を検出。白目部分の顔料は、ココヤシの採れる熱帯地方では、容器が宝庫に納められたとされる平安末期頃まで使われていなかったという。底には「白目」「是」の墨書もあった。
東野治之・奈良大教授(日本古代史)は
「猿などの動物をかたどったミニチュアの面や像だったかもしれない」
と話している。
[ 2010年4月21日 (読売新聞)