国宝「円珍勅書」は写し?=和紙に折り目、崩れた行書体

平安時代を代表する能書家小野道風(894~966)の直筆とされてきた国宝「円珍勅書」(東京国立博物館蔵)が、実は写しであるとの調査結果を、奈良国立博物館の湯山賢一館長が28日までにまとめた。
歴史上著名な人物が書いたとされる文書が直筆ではないと専門家が判断するのは異例で、議論を呼びそうだ。
円珍勅書(正式名・円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書)は、延暦寺の座主だった円珍を僧の最高位「法印大和尚位」に昇格させ「智証大師」の諡号を贈るとの醍醐天皇の命を伝える勅書。道風が927年(延長5年)に書いたと記録されている。
湯山館長は写しである理由を、
(1)巻紙で出される文書なのに、和紙の行間に折り目を付けて広げた跡がある。折り目は1行ずつ真っすぐ写すために付けたとみられる
(2)平安時代の公文書にしては大きく崩れた行書体である
(3)署名の上に書かれた官位の文字が著しく小さく不自然
(4)前年に出された別の文書に押された「天皇御璽」の印影と比べ「天」や「御」の字形が異なり押印も雑
―と説明。
その上で、和紙の色から11世紀中ごろまでに誰かが写したとみている。
湯山館長は
「あくまで一つの説。道風の書風を伝える貴重な文書であることに変わりはなく、国宝の価値が落ちるわけではない」
と話している。
調査結果は4月に刊行される「文化財と古文書学 筆跡論」(勉誠出版)に掲載される。
[ 2009年3月28日[時事通信社]
<小野道風>国宝「勅書」は後世の写し 奈良博物館長が調査
平安時代の和風能書家で「三蹟(さんせき)」の一人、小野道風(894~966)直筆とされる国宝「円珍贈法印大和尚位並(ならびに)智証大師諡号(しごう)勅書」(東京国立博物館所蔵)が後世の写しであるとする調査結果を湯山賢一・奈良国立博物館長(古文書学)がまとめた。
小野道風は藤原佐理(すけまさ)、藤原行成(ゆきなり)とともに「三蹟」とたたえられた。「円珍勅書」は天台座主だった円珍(814~891)死後の927年に醍醐天皇の勅命で円珍を「法印大和尚位」に任じ「智証大師」と諡号した時の文書。原本は中務省に保管され、寺に内容を伝えるため道風が公文書を書き写したとされる。
湯山館長は
▽行書体過ぎる
▽後半に書かれている署名の上にある官位の文字が極端に小さい
▽巻物であるはずなのに一行ずつ折り目が残っている--
などの点から「位記」(位階の授与を証明する公文書)としては異様であることを指摘。前年に出された文書にある「天皇御璽」と比べ内印の文字が少し違い、押し方が雑なことなども根拠に、11世紀中ごろまでに書かれた「写し」と結論づけた。
湯山館長は
「道風の行書体の筆跡を後世に伝えるため、道風の書を手本に強調して書かれたものと考えられる」
と話している。【花澤茂人】
[ 2009年3月28日 (毎日新聞)