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アイスマンは最後にヤギを食べていた


 アイスマン(エッツィ)の胃の残留物を分析した結果、死の数時間前に大量の野生ヤギの脂身で腹ごしらえしていたと判明した。

 エッツィは約5000年前の銅器時代のハンターで、1991年にイタリア北部のアルプス山中から凍った状態で発見された。死亡時の状況は完全には解明されていないが、背中の矢傷などから、山中を逃亡する途中で他のハンターに殺害されたという説が有力だ。

 2008年の腸内残留物の分析では、死の最大30時間前に穀物のほか、調理したと見られるアカシカやヤギの肉も食べていたと判明。しかし胃の内視鏡でのサンプル採取は失敗した。内視鏡が届かなかった理由は翌年、CTスキャン画像の分析で明らかになった。胃が適切な位置になく、本来は肺の下部があるべき辺りまで死亡後に移動していたのだ。

 イタリア北部ボルツァーノにあるミイラ・アイスマン研究所の微生物学者で、研究に参加したフランク・マイクスナー(Frank Maixner)氏によると、「上方へ移動した理由は不明」だという。

 エッツィの胃は、周囲臓器の調査から発見された。胆嚢(たんのう)中の胆石などを見つけ、相互の位置関係から胃を特定できたという。自然にミイラ化したエッツィの胃はかなり萎縮していたが、残留物のサンプルは採取できた。腸と同じように、肉や小麦の痕跡が見つかったという。

 さらに、一部が未消化で残っており、相当な量の食事を取った後、2時間以内に死亡したようだ。「残留物の色は黄色や茶色で、ほとんどが形を留めていなかったが、肉や穀粒など固形物も一部あった」とマイクスナー氏は説明する。

 DNAの分析結果から、胃の中の肉はアイベックスと判明した。山ヤギの一種で、オスの頭部からは後方に湾曲した巨大な角が伸びている。

 当時、アイベックスは今よりはるかに多く生息し、肉を狙うハンターの絶好のターゲットだったはずだ。臆病な動物で人の気配を感じるとすぐ逃げてしまうが、熟練したハンターなら条件次第で近くまで忍び寄ることができる。「例えばオス同士のケンカ中なら、20~50メートルぐらいまで接近できる」とマイクスナー氏は言う。エッツィが所持していた弓矢なら射程の範囲内だ。

 マイクスナー氏は、「肉が調理されていたかどうかは不明だ。ただし腸内からは、加熱処理で発生したと見られる灰の粒子が見つかっているため可能性は高い」と指摘する。胃の中からは獣毛の束やハエも見つかっている。あまり衛生的な食事とは言えないようだ。「追われている途中ではゆっくり調理している時間もなかったと思う」。

 今回の研究成果は、2011年6月にカリフォルニア州サンディエゴで開催された第7回ミイラ研究世界会議(7th World Congress on Mummy Studies)で発表された。



[ 2011年6月24日 (ナショナルジオグラフィック)
  


2011年07月31日 Posted by かるの at 14:01Comments(0)先史時代