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土方歳三辞世に新説「鉾とりて月見るごとに…」
土方歳三の辞世とみられる和歌(京都市の霊山歴史館で)

新撰組副長・土方歳三(1835~69)と最後まで行動を共にした隊士・島田 魁 ( かい ) (1828~1900)がまとめたとされる和歌集の巻頭歌が、土方の辞世と考えられるとの説を、幕末研究で知られる 霊山 ( りょうぜん ) 歴史館(京都市)の木村幸比古・学芸課長が打ち出した。
「従来、辞世とされてきた歌は詠んだ日時の推定が難しいが、巻頭歌は間近に迫る死を覚悟した内容で、亡くなる前日に詠んだ可能性が高い」
としている。
歌は「 鉾 ( ほこ ) とりて月見るごとにおもふ 哉 ( かな ) あすはかばねの上に 照 ( てる ) かと(鉾を手に取って月を見るたびに思う。あすはしかばねの上に照るのかと)」。島田家に伝わる和歌集の冒頭に土方の名で記され、和歌集は26年前に同館に寄贈されていた。
木村課長が今年、修復にあわせて、ほかに名のある30人を調査、大半が新撰組隊士や幕府側の藩士らで、 戊辰 ( ぼしん ) 戦争(1868~69)で降伏し、長く生きたことがわかった。自然のはかなさを詠んだ歌が多く、維新後に隊士らが作り、島田がまとめたと判断した。
土方は、旧幕府軍の指揮官として戊辰戦争に加わり、新政府軍の総攻撃を受け、銃弾に倒れた。生き残った藩士らの証言などによると、その前夜、旧幕府軍幹部らが惜別の 宴 ( うたげ ) を開いていた。木村課長は
「歌には悲壮な決意が示されており、土方が明日の死を予期しながらこの席で詠み、島田が大切に記録していたのでは」
と話す。
[ 2011年6月15日(読売新聞)